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きず跡(ケロイド・肥厚性瘢痕)

傷跡(きずあと)の治療について

ケガや手術のあとに残るきず跡。時間が経てば自然に目立たなくなるものもありますが、なかには赤く盛り上がったり、かゆみや痛みを伴ったりして、いつまでも治らない傷跡もあります。

これらは単なるきず跡ではなく、肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)やケロイドという、治療が必要な状態かもしれません。

 

肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)とケロイドとは?

皮膚にできた傷が治るプロセスのなかで、何らかの理由によって皮膚を修復するための成分(主にコラーゲン)が過剰につくられてしまうことがあります。その結果、傷跡が赤く盛り上がってしまった状態が肥厚性瘢痕ケロイドです。

見た目はよく似ていますが、医学的には以下のような違いがあります。

肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)

ケガや手術の跡が、一時的に赤く大きく盛り上がったものです。 盛り上がりの範囲が、最初の傷の範囲を超えて広がることはありません。年単位の長い時間がかかることもありますが、少しずつ赤みが引き、平らになっていく傾向(自然に落ち着いていく傾向)があります。

ケロイド

傷口を修復する力が暴走してしまい、傷があった場所だけでなく、周囲の正常な皮膚にまで赤みや盛り上がりがもりもりと広がっていくものです。最初の傷の範囲を超えて、どんどん大きく成長していきます。肥厚性瘢痕とは違い、自然に治ることはほとんどありません。 強いかゆみや痛みを伴うことが多いです。

 

肥厚性瘢痕、ケロイドの症状

具体的にどのような症状が現れるのか、見た目の変化と、体で感じる自覚症状に分けて解説します。

 

<見た目の変化(皮膚の盛り上がりや変色)>

赤みや紫色の腫れ・・・傷口の周りに細い血管がたくさん集まるため、鮮やかな赤色や、やや紫がかった色に見えます。

皮膚の盛り上がり・・・皮膚が硬くなり、ドーム状やミミズ腫れのようにぷっくりと盛り上がります。

周囲への拡大(ケロイドの場合)・・・最初の傷の形に関係なく、カニの足が伸びるようにもりもりと周囲の健康な皮膚へと広がっていきます。

<自覚症状>

単に「見た目」の問題だけでなく、以下のような不快な症状を伴うことがよくあります。

強いかゆみ:体が温まったとき(入浴後や運動後、布団に入ったときなど)に、じっとしていられないほどのかゆみを感じることがあります。

痛み:服が擦れたり、触れたりしただけでピリピリ、ズキズキとした痛みを感じることがあります。何もしていなくても、突っ張るような痛みが出ることもあります。

ひきつれ:関節の近く(肘、膝、手首など)や、首、口の周りなどに大きな肥厚性瘢痕やケロイドができると、皮膚が引っ張られて突っ張ってしまいます。これを瘢痕拘縮(はんこんこうしゅく)と呼びます。

※瘢痕拘縮(はんこんこうしゅく)

傷跡が硬くなって縮むことで、関節がスムーズに伸ばせなくなったり、口や目が開きにくくなったりする状態のことです。日常生活に支障が出るため、治療を要します。

 

肥厚性瘢痕、ケロイドの原因

なぜ、普通の傷跡にならずに盛り上がってしまうのでしょうか?傷自体が原因のものと体質的なものがあります。

<傷自体が原因>

傷が治るまでに長い時間がかかってしまうと、傷を治す過程でコラーゲンが過剰に作りだされることで、ケロイドや肥厚性瘢痕になりやすくなります。

傷が深かった: 火傷や、深い切り傷は治るのに時間がかかります。

感染を起こした: 傷口に細菌が入り込んで化膿してしまうと、炎症が長引きます。

傷口に異物が入った: 砂やゴミ、服の繊維などが傷口に残っていると、体がそれを排除しようとして炎症が続きます。

常に引っ張られる場所である: 胸元、肩、背中、下腹部(特に出産時の帝王切開の傷など)、関節のまわりは、呼吸や体の動きによって常に皮膚が引っ張られる場所です。この引っ張られる力(傷への緊張)が刺激となり、コラーゲンなどが過剰に作られてしまいます。

 

<体質などによる原因>

同じケガをしても、なりやすい人とそうでない人がいます。

ケロイド体質(遺伝的要因):ご家族にケロイド治療経験がある方は、小さな傷(ニキビ跡、虫刺され、ピアスの穴など)からでもケロイドに発展しやすいことが分かっています。

その他:肥満(BMI25以上)の方、高血圧の方、妊娠中の方などは代謝性因子によって、ケロイドができやすく大きくなりやすい傾向があります。

 

肥厚性瘢痕、ケロイドの治療法

傷跡の治療は、一つの方法だけでなく、色々な角度からのアプローチが効果的です。患者様の症状やライフスタイルに合わせて、最適な方法をご提案します。

 

ステロイドの貼り薬・注射: 強い炎症を抑える効果があるステロイド成分が含まれたテープ(エクラープラスターなど)を傷跡に合わせて小さく切り、毎日貼り付けます。これにより、盛り上がりが少しずつ平らになり、赤みやかゆみが引いていきます。

注射による治療(局所注射療法):盛り上がっている硬い傷跡の中に、直接ステロイド薬(ケナコルトなど)を注射します。貼り薬よりも効果が早く強く出ますが、注射の際に少し痛みを伴うことや、周囲の皮膚が一時的に薄くなったり毛細血管が浮き出たりする副作用に注意しながら行います。

保湿剤:傷跡が乾燥するとかゆみや変色が強くなるため、皮膚を柔らかく保つ保湿剤を使用します。

圧迫療法(あっぱくりょうほう):傷跡の上から、シリコーン製のシートやテープ、包帯などで適度な圧力をかけ続ける治療です。 傷跡に余計な血液が行き届くのを抑え、皮膚が引っ張られる刺激をブロックすることで、盛り上がりが大きくなるのを防ぎます。

 

手術(外科的切除)

ひきつれが強くて体が動かしにくい場合や、他の治療で効果が出ない大きな傷跡に対して行います。

方法: 傷跡(ケロイド・肥厚性瘢痕)を一度きれいに切り取り、皮膚にかかる負担を減らすように特殊な方法(Z形成術など、傷の方向を変える工夫)で細かく縫い直します。

注意点: ケロイドの場合、ただ切るだけでは高い確率で再発し、前より大きくなってしまうことがあります。そのため、手術直後から次に説明する放射線治療や、テーピングなどのアフターケアをセットで行うことが絶対に欠かせません。

※手術後の放射線治療(電子線照射)

主にケロイドを手術で切り取った後、再発をできるだけ防ぐために行う治療です。 手術をした当日から数日以内に、傷口に数回に分けて弱い放射線(電子線)を当てます。これによって、傷口の細胞が再び暴走するのを強力に抑え込みます。

※当院では放射線治療はできないため他施設を紹介いたします。

 

肥厚性瘢痕やケロイドの治療は、お薬を塗ったり貼ったり、時には数ヶ月から年単位の時間をかけてじっくりと付き合っていく必要があります。「昔の傷だからもう治らないだろう」「体質だから仕方がない」と諦めていないでしょうか。医療の進歩により、現在では多くの治療方法があります。どれがご自身に合った治療なのか、一緒に考えていきますのでぜひお気軽にご相談ください。

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